スリムセラ
スリムセラ。
姉が誕生日に欲しがったものである。
誕生日を迎え31歳、アンチエイジングのためだというが、
姉の部屋の、今やちっとも使われない
ナノケアを見る限り、スリムセラの行く末も暗い。
姉へのプレゼントは母と半分ずつ負担して買う
という算段になっていた。
姉に何が欲しいかとリサーチするのは私の役割だったのだが、
「スリムセラ」と言われても何のことだか判らない。
私は美容の分野はなんだかもう疎過ぎて、
おっさん。そのように呼ばれてしばし断つ。
「美顔器が欲しいんですと。」
そう母に告げると、母は苦い顔をして
「どうせすぐ使わんようになるがなっ」
と吐き捨てるように言った。
母の脳裏にもナノケアが浮かんだに違いない。
しかし父に言わせると、
母も昔誕生日にぶら下がり健康器や
エアロバイクを欲しがったのであり、
それがいつの間にやら部屋の隅に追いやられ
洋服を掛けるなにかに変わったのであり、
なるほど、言われてみると私もよくそれを
覚えている。
母に残ったのは今の体型であり、
姉に残るのはおそらく今とそう変わらない肌であるが、
家族にはそのようにつまらない記憶が残る。
おそらく生涯共有されない記憶かもしれないが、
まぁええやん。
まぁええんちゃうん。
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